日ごろから経営者、労務担当者の頭を悩ます「人」の問題。
数字を合わせるように割り切れないのが実情。 
そうはいってもこのままにしておけないし・・・ 。まずは労務管理の基本から押さえましょう。 
当事務所で相談があった事例をいくつかご紹介いたします。
                   こちらも合わせてご覧ください。   ワンポイント労働基準法
採用時の留意
     
雇用期間中の留意
労務管理関係
給与計算関係
パートタイマー関係
   
退職時の留意点
                                
労働条件を口頭説明、言葉の行き違いでトラブル
よくあるトラブルです。応募者は、ハローワークの求人や、新聞広告等を見て給与や労働時間を把握しています。仮に、面接の話し合いの中で、別の部門や労働形態(例えばパート勤務)等で採用可とした場合、違った箇所があいまいなままではトラブルのもとです。
①応募者がどの求人を見て応募したのか
②今回の採用は別の形態であること、その場合の労働条件(時間、給与、勤務場所等)を再確認、それでも当該応募者は勤務希望なのか
③実際の採用時は労働条件通知書の交付
を押さえてください。労働条件の書面交付は義務となっています。
書面を交付して明示しなければならないとされている事項
 労働契約の期間に関すること
 仕事の場所・従事する仕事の内容に関すること
 始業・終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇、交替制勤務をさせる場合は就業時転換に関すること
 賃金(退職手当及び臨時に支払われる賃金等を除きます。)の決定、計算・支払いの方法、賃金の締切り・支払いの時期に関すること
 退職に関すること(解雇の事由を含む。)
  なお、パートタイマーについても上記の項目については口約束だけではなく、書面で明示することが必要です。
試用期間中だから解雇予告なくていい?
試用期間中でも雇用後14日を過ぎたら、他の社員同様、解雇予告および解雇予告手当が必要になります。(労働基準法21条)
また、試用期間中の解雇事由や本採用しない場合のある旨を事前に説明しておくとトラブル回避につながります。お知らせが入ります。
試用期間中は社会保険にいれなくていい?
試用期間中なら社会保険に入れなくていいというのは間違いです。
社会保険の適用除外者に「試用期間中の者」はありません。
一方、雇用保険も、1カ月以上の雇用が見込まれる場合で週20時間以上勤務がある場合は雇用保険に加入する必要があります。

就業規則、社員にみせたくないけど
就業規則の効力は周知されているからこそ発揮されます。(労働契約法7条)
社員のわからない場所へ保管したり、見せていないのであれば、せっかく「リスク対応型就業規則」をつくっても無効となってしまいます。
こういったトラブル回避には、就業規則説明会を行うことが有効です。就業規則をあいまいにし、社員に混乱や戸惑いを与えることは決して効率のいいことではありあません。説明会を行い、安心して仕事に従事することができる環境をつくることも労務管理の基本です。
36協定やその他労使協定って監督署に提出しなければならない?
一口に労使協定と言っても労務管理上、多数あります。全てが提出の必要があるわけではありません。以下、代表的なものを列挙しました。
労使協定を締結しなければならない場合 監督署への届出
労働時間関係
1ヵ月単位の変形労働時間制を適用する場合
 *1箇月以内の変形労働時間制については、労使協定によらず就業規則で定めることもできます。その場  合には、「就業規則を提出」することで、労使協定に代えることもできます。
要(*)
1年単位の変形労働時間制を適用する場合
1週間単位の変形労働時間制を適用する場合
フレックスタイム制を適用する場合 不要
休憩時間を一斉に付与しない場合 不要
時間外労働または休日労働をさせる場合(36協定)
事業場外労働で一定時間勤務したものとみなす場合
*みなし勤務時間が所定労働時間以内であれば、労働基準監督署への届出不要です。
専門業務型裁量労働制
*みなし勤務時間が所定労働時間以内であれば、労働基準監督署への届出不要です。
企画業務型裁量労働制
*企画業務型裁量労働制については、「労使委員会の委員の5分の4以上の多数による決議」により定めることとされており、労使協定によるものではありません。この決議は労働基準監督署への届出を要します。

みなし勤務時間が所定労働時間以内であれば、労働基準監督署への届出不要です。
年次有給休暇関係
年次有給休暇を計画的に付与する場合 不要
年次有給休暇中の賃金として、標準報酬日額相当額を支払う場合 不要
給与控除関係
財形貯蓄の天引きなど、賃金を一部控除して支払う場合 不要
私傷病で休んだ社員への給与支給
実はこういったケースの取り扱いを明確に定めていない会社が結構あります。
就業規則に、社員の私傷病に対する規程(休職規定)があり、その中に、給与給与の支払いはどうするかが記載されているのであれば、就業規則どおり(支給、不支給)となります。
しかし、明確に規程がない場合、今までの慣例が優先されます。

Poit
  • 健康保険に「傷病手当金」という給付があります。傷病手当金は会社から給与が支払われていた場合、原則支給されません。こういった給付を上手に使用しながら休職できる環境をぜひ「休職規定」として就業規則に入れるべきです。あの人には支給する、この人には支給しないといった形態や「もしものときに、どうなるかわからない」とした社員の不安は、社員の就業意欲をそぎます。
労使協定の社員代表ってどうやって決めるの
「労働者代表」とは、
  ① その事業場に労働者の過半数で組織するときはその労働組合
  ② その事業場に労働者の過半数で組織するときはその労働組合がないときは、労働者の過半数を代表する者
 となります。
労働組合の無い会社で、「労働者の過半数を代表する者」が決まっていないときは、挙手もしくは選挙などで選定します。
この場合、事業主や使用者は「労働者の過半数を代表する者」を指名するなどの行為を行ってはなりません。
最近よく聞く労務リスクって何?
サービス残業、過労死・過労自殺、偽装請負、名ばかり管理職、、どのフレーズもお聞きになったことがあるはずです。
このことから覗えるのは、もはや会社にとって
労務コンプライアンス(法令順守)は無視できないということです。

ところが、社内に労務リスクが放置され、労働者の申告などによって労務トラブルに発展している企業が後を絶ちません。
全国の労働基準監督署などに設置されている総合労働相談コーナーに持ち込まれた相談件数は、平成20年度にはついに100万件を突破するなど増加の一途を辿っているほどです

このように労務コンプライアンスを軽視したことによっておこるリスクを総称して労務リスクと呼んでおります。

 労務リスク事例

【未払い残業代】
アルバイトからも未払い残業請求訴訟を起こされる時代になっております。思いこみでタイムカードの端数処理をしたり、残業計算をしていると大きなリスクを背負うことになります。
未払い残業代などを遡って支払うことになった場合、1人数百万円の未払い賃金を従業員分一気に支払うことになるかもしれません。

【不当解雇】
いくら気に入らない社員だからと言って、「もう来なくてもいい」といいと簡単に解雇して不当解雇で訴えられてしまった。
不当解雇となった場合、その従業員の賃金を遡って支払う必要が出てきます。

【安全配慮義務違反】
残業代ちゃんとはらっているからいいだろう。と長時間労働を黙認。長時間にわたる残業を恒常的に伴う業務に従事していた労働者がうつ病にり患し自殺した場合、数億円の損害賠償を支払うことにもなりかねません。

残業単価の計算、本当にあっているの?
労務リスクのなかでもサービス残業の問題は、お金が伴うだけにきっちり防止に限ります。
  • 時間単価の計算は、「対象賃金÷月平均所定労働時間×割増率」 
  • 除外していいのは以下⑦項目に限定されています。
  • ①家族手当、通勤手当、別居手当、子女教育手当、住宅手当 臨時に支払われる賃金、1カ月を超える期間ごとに支払われる賃金
  • 思いこみで「役職手当」を割増単価から除いていたり、「役職手当」払っているから残業代はいらない、あるいは年棒せいだから残業代はいらないとした計算をしていると大きなリスクを背負うことになります。
賞与って絶対払わなければならない?
賞与の支払いは賃金と違い、労働基準法で絶対払いなさいと言っているわけではありません。会社の任意となります。ただし、支払うのであれば就業規則に賞与について明記する必要があります。
就業規則(賃金規程)の中の賞与項目はどんな条文になっていますか?
もしも
就業規則の中に、「○ヵ月分支払う」と明記されていれば、必ず支払わなければなりません。
賞与を絶対支払わないという会社も少ないはず。でも大手のように○ヵ月という一律な決め方はNGです。
就業規則の中の賞与項目の記載条文は是非見直したい規程でもあります。
役職手当払っているから残業代払わなくって大丈夫?
役職手当を払っているから残業代がいらないというのは大きな間違いです。これがいわゆる「管理職問題」と言われているものです。(労基法41条)
  • 管理職が労働基準法による労働時間等の適用除外とされるためには厳しい条件をクリアしなければなりません。
  • 役職手当をつけているから管理者だという言い分は通りません。
  • 詳細はこちら→ 事例 
タイムカードの端数処理が自己流。いいのかな
労働時間集計の端数計算については毎日1分単位集計、1カ月合計を30分未満四捨五入です。
毎日15分単位でカットしたり、残業の時間管理を労働者に一任していませんか?タイムカード集計の是正とともに残業ルールをぜひ見直すべきです。
営業だから残業はつけなくていい?
こちらもよくある事例でもあります。営業職はいったん外に出たら労働時間把握ができないから「みなし労働時間」という労働時間管理(労基法38条の2)を行っている会社も多いです。
しかし、携帯電話等の普及から労働時間管理も容易になり、営業職だから「みなしい労働時間」という解釈が容易ではなくなりました。
そのため、営業社員の未払い残業をめぐって訴訟も起こっております。
もはやみなし残業と営業手当で大丈夫という時代ではありません。

point
みなし労働時間適用の有無
事業場外で業務に従事する場合でも使用者の具体的指揮監督が及んでいる場合にはみなし労働の適用はありません。使用者の具体的指示が及んでいるかどうかは総合的に判断されます。例えば携帯電話は支給しているだけでは足りず、業務報告、行動報告する体制や、予定表等によって行動内容を告げる体制があるか等、判断要因とされています。
パートタイマーにも就業規則が必要?
パートタイマーは労働形態や、賃金の支払い基準等、正社員と雇用体系があるはずです。パートタイマーが一人でもいれば、パートタイマーの規則をつくらないと、正社員の就業規則が当該パート社員にも適用となります。
パートタイマーから退職金を請求された
これもパートタイマーの就業規則と関連します。パートタイマーは正社員と雇用条件が違います。退職金は「パートタイマー」には支給しないと規定しておかないと、パートタイマーにも請求権が発生することになります。
「パートタイマーとはどんな人を指すのか」も含め、規程をご確認されることをお勧めします。
時給者はパートタイマー?
パートタイマーの定義は「正社員に比べ労働時間が短い人」ということです。
時給者だから一律パートということではありませ。
例えばパートタイマーでも、正社員と同じ仕事をし、同じだけの労働時間働く場合もあります。
このようなパート
タイマーを「疑似パートタイマー」と呼び、社会問題にもなりました。これを受けて、パートタイム労働指針でパートタイマーの処遇についての均等待遇に努力義務を課しております。
時給者は一律パートタイマーと理解し、社会保険にも入れない、ということではとおりません。
パートタイマーは社会保険に入れなくていいの
パートタイマー(時給者)であっても常態として雇用されているようであれば社会保険に加入する必要があります。
常態雇用のラインは当該就労者の労働日数、労働時間、就労形態、職務内容などを総合的に勘案して認定すべきものであるとされています。
概ね正社員の4分の3以上の労働時間がある場合は常態雇用とみなされます。
また、雇用保険は1カ月以上の雇用見込みがあり、1週間当たり20時間以上の労働時間がある場合
加入しなければなりません。
解雇のルール
解雇をする時の以下の点に留意する必要があります。
①解雇事由の正当性
②解雇の手続き(予告、予告手当)
③就業規則による解雇事由に適合するか
解雇についてが平成19年、労働契約法により厳格な規程が置かれております。

参考条文

労働契約法
(解雇) 第16条
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。
また、懲戒解雇を行う場合も同様とします。
(懲戒) 第15条
使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする。